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ワインの抜栓の仕方ABC

はじめに



抜栓をするときは、ワインとソムリエナイフがあればいいと思いがちですが、ぜひトーション(白い布)を用意することをおすすめします。トーションを使うと、ボトルの口やコルクが汚れている時に、さっと簡単に拭くことができます。古いワインや、セラーの中で寝ていたワインは、コルクの上に黴がついていることが多々あります。たとえばシャトーパルメのセラーなどは、黴だらけの、しかし垂涎もののワインが眠っています……。            


ソムリエナイフの持ち方


写真のように持つことが基本です。片手で刃やスクリューを開いたり閉じたりする事もありますが、慣れないウチは両手でていねいに開けましょう。我々プロフェッショナルは、毎日何十本ものワインを抜栓します。使い込んだナイフは、刃も開きやすくなっているのですが、新品同様のナイフは、刃を止めている部分が堅く、うっかり扱うと怪我をすることもあります。また、家庭で使う場合、シールカッターの刃はまず研ぐ必要はありません。手入れは、ワインを抜栓する度にトーションなどで拭う程度で良いでしょう。可動部分にCRC-556のような防錆スプレーを噴くのはやめましょう。匂いがワインに移ります。               


キャップシール


ワインのボトルは、コルクで栓がしてあり、その上に鉛(最近では鉛毒の問題もあり、使われなくなりつつあります)やアルミなどのキャップシールがかけられています。まずは、これを切ってコルクを出さなくてはなりません。このキャップシールは、高いワインほど厚く、安いワインのほど薄い傾向にあるようです。薄い方が切りやすいような気がしますが、じつは厚いシールの方が切りやすいのです。また、カリフォルニアやオーストラリアなどは、資源問題など、さまざまな事情から、キャップシールを使わない「フランジボトル」を使うワイナリーが増えてきました。こういう場合はキャップシールを切る作業は不要です。キャップシールを切る位置は、写真の通りです。                             


ラベルをお客様に見せる


これはプロフェッショナルの仕事です。ご家庭でなさる場合、こういった作業は不要だと思われますが、お客様をお迎えした場合など、さりげなくお見せするのもホスティングとして効果的かもしれませんが、仰々しくやるのはかえって格好悪いものです。           

キャップシールを切る


キャップシールは3アクションで切ります。漫画やTVなどで、素早く、派手にやっていますがあんなに見せびらかすようにやるのは、いささか下品です。まずは慣れることが肝心ですし、確実に、ていねいに行う方が、はるかに格好良いと思います。まずは、写真のようにキャップシールの、向こう側を切ります。この時、ラベルをお客様側に向け、右45度の部分に親指を固定します。この親指を動かさないのがポイントその1です。また、左手は力を入れすぎることはありませんが、ボトルが動かないようにきちんと固定しましょう。力みすぎると怪我をしますので、注意(^_-)ミ☆                               

親指を固定するポイント


写真のように親指を固定し、そこを支点にナイフの刃で180度切ります。ボトルの出っ張りに沿うように切ると、手前側と向こう側できっちり合わない、ということはありません。この時に、薄いキャップシールより、厚いキャップシールの方が切っている実感があって判りやすいのです。最初は失敗してもかまいません。慣れることでどんどん上手になって行きます。  

手前側を切る


2アクション目。向こう側が切れたら、次は手前側です。ナイフを持ち替え、写真のように、右手の人差し指を引っかけるようにして固定します。これがポイントその2。       

ナイフの持ち方


ナイフは写真のように握り換えます。最初は自分側(親指側)に刃先が向き、人差し指を峰にあてがっていましたが、くるりと裏返して、親指の腹を峰にあてがうようにします。これをきちんとしないで、手首を返して無理矢理切ろうとすると怪我をします。道具というものは、遣い手次第ではとても使いやすいものになりますから、正しい握り方を体に覚え込ませてしまいましょう。左横から180度、しっかりシールを切ると、先ほど切り始めた部分と巧くつながります。                                       

キャップシールを取り除く


3アクション目です。最初に向こう側を切った要領で、切り目に刃をあてがい、手前に引き起こします。きれいにキャップシールが切れていれば、ぽろん、とキャップシールが取れます。他にもさまざまな切り方がありますが、この形が一番スタンダードですし、確実です。最初は、うまく切れないかもしれませんが、「支点の置き方」と「握り方」を意識しながら何本か経験すれば、だんだんコツがつかめてくるでしょう。                    


トーションでボトルネックを拭く


キャップシールの中には、汚れや黴があることが多々あります。この段階でざっとトーションで拭いてしまいましょう。汚れたままでコルクを抜くと、汚れがワインの中にぽとりと落ちて……などということにもなりかねません。また、この時に、ワインがにじみ出していたり、コルクが浮いていないかどうかチェックします。ワインが熱にやられて拭いてしまった場合、この段階や、キャップシールを切る前で判りますが、ワインが傷んでいる可能性もあります。 

スクリューを差し込む


さて、いよいよスクリューですシールカッターの刃はしまい、写真のようにスクリューを出して、コルクに先端を差します。このとき、先端をスクリューの真ん中よりやや向こう側に差し、手前にひっかけるようにしながらスクリューを立てて行きます。これがポイントその3。真ん中に差してしまったり、立てるときに押し込むようにすると、スクリューがコルクの中心に入って行きません。ここでまっすぐコルクを入れることが、後の抜き易さにつながります。


立てたスクリューを回して差し込む


スクリューを回していくときは、ぐいぐい押さずに、写真のように蝶ネジを閉めるような感じで軽く持ち、少しずつ入れて行きます。この時にわしづかみで回すと、スクリューは必ず曲がって入ります。この回し方がポイントその4です。そして、スクリューを2巻半残したところで止めます。ここがポイントその5。ここでおくまで入れてしまうと、安い、コルクの短いワインなどはスクリューが突き抜けてしまいます。コルクがワインに落ちていると、美味しくありませんよね。                                   

コルクを少しだけ起こす


2巻半残した段階で、写真のようにコルクを少しだけ抜きます。このときのナイフの握り方がポイントその6です。左手はボトルをしっかりホールドし、右手の人差し指を写真のようにナイフの背にあてがいます。そして小指と薬指で握ったナイフを上に持ち上げて行くとコルクは抜けます。よく「巧く抜けない」という方は、この時にナイフを鷲掴みにしていることが多いようです。そうすると、スクリューの角度が垂直ではなく、斜めに動くので抜きにくくなるのです。右手の人差し指を写真のようにあてがえば、スクリューはまっすぐ上に上がります。その際に、右手をほんの少しだけ手前に引くような意識で起こすと良いでしょう。また、ここでコルクを起こすのは、せいぜい1〜1.5センチだけです。これがポイントその7です。   

コルクはこのくらいまで


約1.5センチほど抜いたところで、次に進みます。堅いコルクでも、この方法なら比較的力を入れずに抜くことができます。ここで一気に抜こうとすると、スクリューの長さが足りなくてうまく抜けないことが多いのです。無理矢理引っこ抜くとコルクの端が欠けたりして、悲しいことになってしまいますよ。                                  

1巻分、さらにスクリューを入れる


この「1巻分」がポイントその8です。短いコルクでも、たいてこのくらいまではスクリューの先端が突き破ることはありません。高いワインのロングコルクも、この「1巻」で、たいていきれいに抜くことができます。もしそれでも抜けそうにない場合、もう1巻分差し込むことも可能です。安いソムリエナイフは、じつは半巻〜1巻、スクリューが短いことがあります。ですから、なるべく長めのスクリューを持ったヘンケルなどのナイフを手に入れることをおすすめします。高いと言っても、せいぜいごちそうワイン1本分〜2本分です。

最後まで抜栓


先ほどと同じ要領でコルクを抜きます。最後の1mmくらいはそのまま抜けないのですが、コルクを持ってゆっくりと抜きましょう。ナイフだけで抜いてしまうと「ぽん!」と音がしてしまいます。ソムリエ試験では減点かもしれません。音が立たないように、そっと抜くのが良い抜き方で、これはシャンパンでも同じです。                          

抜いたコルクを確認


抜いたコルクを目で見て、さらに匂いを嗅ぎます。若いワインはそれほどでもありませんが、古いワインで、保存状態の良いものは、コルクが柔らかく、ワインで全体が濡れています。このコルクの状態だけで、ワインが健康かどうか、保存状態がよいのかどうかが判断できます。コルクに異様な刺激臭がある場合、ワインが傷んでいることがあります。この段階で怪しいものは、ソムリエが少しだけテイスティングをして、傷んでいるかどうか確認をします。     

トーションで、ボトルの内側を拭きあげる


最後に、トーションを折って、先端でボトルネックの内側を拭きます。コルクがふれていた部分は、酒石酸やゴミなどが付いていることがありますので、それを中に落とさないように、拭きあげる感じで。これがポイントその9。フィニッシュをていねいにすることが、ワインを美味しい状態で呑む最大の秘訣です。